ブラック部活動ってよく言われるけど、これだけ問題視されているのに、なぜなくならないの?
そんな疑問を社会心理学の名著『影響力の武器』から考えます。
ブラック部活動の定義
ブラック部活動とは、生徒の視点、教師の視点から以下のような例を示されることが多いです。
生徒の視点
- 部活動の強制加入
- 理不尽なルール
- 先輩からのいじめ
- 長時間による練習&休みがない
- 顧問による体罰、暴言
そもそも、部活動は自主的、自発的な参加によるものなので、強制加入というのはかわいそうですよね。
ただ、そういった学校がいまだに存在することは間違いないです。
また、「部活動に加入しないこと」を選択できるのにも関わらず、加入していない生徒は後ろめたさを感じるパターンも多いです。
そして、全国の中高生の中には、部活動入部後に、退部をしたいのにも関わらず、なかなか辞めさせてもらえず、うつ病になってしまう生徒もいるそうです。
なんか、ブラック企業に似てますよね。
教師の視点
- そもそも平日は勤務時間外の業務を強いられる
- 平日の部活動指導手当はもちろん出ない
- 休日がなくなる
- 未経験部活の指導を強いられる
- 顧問を拒否できない
部活動顧問は、放課後から19時頃まで部活動の指導にあたります。
その後から、本来なら定時までにやるはずだった仕事をやっていきます。
まず、このサイクルが大変です。
しかも、部活の顧問は基本的に拒否はできません。
そのため、経験のない部活動などに配属された場合、非常に大変になることは事実です。
このように、大変な部活動の実態が「ブラック部活動」と呼ばれています。
どうしてブラック部活動はなくならないの?
生徒も教師も辛いのに、
どうしてブラック部活動はなくならないの?
実際、「部活動顧問になりたくて教師をなった」という先生方はかなりの数で存在します。
実際、私もそういった先生方に数多く出会ってきました。
もちろん、そういった先生方は部活だけでなく、その他の業務もしっかりとされています。
しかし、部活動への指導をしたくない先生もいます。
本来的な教師の仕事である、授業作り、学級経営、生徒指導、分掌業務などを充実して取り組みたい先生方が結構いるものです。
そんな先生方が「部活動の指導をしたくない」と言いにくい現場の空気感であることは間違いありません。
それなのに、なぜ「ブラック部活動」はなくならないのでしょうか?
それは、「人は労力をかけたことに対して、一貫した態度を取るようになる」という人間の性質によって引き起こされています。
詳しく見ていきましょう。
人は「過酷な経験」によって、集団を信頼する
過酷な経験をさせられたら、
その集団が嫌になるんじゃないの!?
心理学的には、「過酷な経験」を無理矢理でも乗り越えてしまった場合、より集団への帰属意識が高まると言われています。
例を挙げていきましょう。
1959年、社会心理学の研究において、
「何かを得るために大変な困難や苦痛を経験した人は、苦労なく得た人よりも、得たものの価値を高く見積もるようになる」のではないか、と考え、実験をしました。
ある学生集団に対して、サークルの加入の実験をしました。
そのうち、一つのコミュニティは「強い電気ショックを受けること」がサークルへの参加条件としました。
もう一方のサークルは、何もせずとも入れます。
すると、面白い結果が出ました。
なんと、強い電気ショックを受けた学生たちは、サークルの活動が面白く、知的で、望ましいものであると感じていたそうです。
一方、何の苦痛もなくサークルに入れた学生たちは、自分達のサークルは「価値がない」と低い評価をしたそうです。
この例以外にも、アフリカの54の部族の文化を調べた研究もありました。
簡単にいえば、その部族に加入するための儀式が、苦痛で残酷であればあるほど、非常に強い団結をしているということでした。
つまり、過酷な経験によって、コミュニティの団結を高めるのです。
では、学校教育に置き換えて考えていきます。
一部の教師を勘違いさせるブラック部活動
先ほどの心理学の検証結果から、学校は教師の威厳を高め、また、学校としての団結力を高めるために、昔から生徒に過酷で苦痛な経験をさせることが多かったといえます。
例えば、体罰を例に考えていきましょう。
現在、学校教育において体罰は否定される風潮になりました。
しかし、以前の学校ではこんな考え方が当然のようにありました。
- 体罰によって学んだことはたくさんある
- 痛みによって覚えることもある
- 殴られないとわからない子もいる
むしろ、親が「うちの子、悪いことしたら殴っても叩いてもいいんで!」という人も多く、社会全体がそういった風潮だったこと時代もありました。
この原因は、「教員や保護者の世代が体罰を乗り越えて成長してきた体験があるから」です。
この「教員や保護者の世代が受けてきた苦痛」と「成功体験」が強く結びついてしまっているのが、ブラック部活動がなくならない原因です。
- 部活は成長できるものなんだから、強制的に加入すべきだ。
- 休みの日なんていらない。練習をするべきだ。子どものためなんだから。
- 子どもの成長のために厳しい指導をするんだ。
こういった一部の教師の思想がある限り、ブラック部活動はなくならないでしょう。
そして、このブラック部活動の思想が、今の日本社会のパワハラにも確実につながっている要因であると考えます。
まとめ
ブラック部活動をなくすことで、子どもも教師も健康な心身を取り戻し、よりよい学校生活を過ごすことができたらいいな、と思い、この記事を書きました。
最後に、私は「好きなものに没頭すること」には非常に価値があると思います。
問題は、部活動というシステムのせいで、子どもも大人も疲弊している人たちが大勢いるという点です。
どうか、部活動を指導したい大人と、部活動をしたい子どもが、Win-Winの関係になれる時代が来ると良いなと思っています。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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