どうも。最近は「自分の脳すら自分を騙す」という研究(R)を読んで、戦々恐々としている僕です。
さて、道徳の授業のラスト5分。
「はい、じゃあ今日の授業の振り返りを書いてください」
と言った後、子どもたちのノートを見てガッカリすることはありませんか?
- 「〇〇さんの意見がすごかったです」
- 「これからは友達に優しくしたいです」
- 「勉強になりました」
……「感想文」になっとるやないかい!
と、心の中でツッコミを入れたくなるあの瞬間です。
特に中学生になると、「先生が喜ぶ答え」を察知する能力だけが異常に発達していたりして、余計に本音が見えにくくなったりします。
今回は、そんな「形だけの振り返り」を卒業し、「思考の記録」として価値あるものにするための記述指導について解説します。
結論から言うと、「過去・現在・未来」の3つの箱を用意してあげるだけで、記述の質は劇的に変わるんですよねぇ。
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なぜ「感想」で終わってしまうのか?

子どもたちが「楽しかった」「優しくしたい」と書くのは、やる気がないからではありません。
「何を書けばいいか分からない」からです。
漠然と「振り返り」と言われると、子どもは無意識に「先生が喜びそうなまとめ」を探してしまいます。
質問に対して、自分の本音ではなく「社会的に好ましい」とされる回答を選んでしまう心理傾向のこと。
学校という場では、特にこのバイアスが強く働きます。
出典:Edwards, A. L. (1957). The social desirability variable in personality assessment and research.
結果、「優しくしたいです(本音は別として)」という、優等生的な回答が量産されるわけです。なんとも困ったものですね。
思考を整理する「3つの視点」フレームワーク

そこで提案したいのが、時間を区切って思考を記述させる「時系列フレームワーク」でありました。
ノートの振り返り欄を、以下の3つの観点で構成します。
1. 過去(Before):「授業前の自分」

- 問い: 「授業の最初、あなたはこのテーマについてどう考えていましたか?」
- 狙い: 変化を実感するための「基準点」を確認する。
人間は、自分の考えが変わったことに気づきにくい生き物なんでしょうな。
目の前の変化に対して、意外なほど気づかない現象のこと。
思考においても同様で、「最初から今の考えだった」と記憶を無意識に改ざんしてしまうことがあります。
出典:Simons, D. J., & Levin, D. T. (1998). Failure to detect changes to people during a real-world interaction.
あえて「最初の自分」を書かせることで、「あ、俺最初はこう思ってたんだ」とメタ認知させます。中学生なら、「授業前の自分の考えの甘さ」に気づくだけでも大きな収穫っすね。
2. 現在(Now):「授業中の気づき」

- 問い: 「誰の意見を聞いて、どんな風に考えが変わりましたか(深まりましたか)?」
- 狙い: 他者との関わりを記述させる。
ここで重要なのは、「他者の意見」を引用させることです。
「〇〇くんが『〜』と言ったのを聞いて、なるほどと思った」
このように書くことで、対話による変容(道徳的価値の自覚)が可視化されます。
3. 未来(Future):「これからの行動」
- 問い: 「明日、似たような場面があったら、具体的にどう行動しますか?」
- 狙い: 抽象的な「優しくする」を、具体的な「行動」に落とし込む。
心理学で攻める!「未来」の書き方テクニック
特に重要なのが「未来」の記述です。
単に「頑張ります」で終わらせないために、最強の心理テクニックを使いましょうか。
イフ・ゼン・プランニング(If-Then Planning)

「もし〜したら、その時は〜する」という形式で書かせる方法です。
「もし(If)Xが起きたら、(Then)Yをする」と事前に決めておくことで、脳がその状況を検知しやすくなり、無意識に行動できるようになります。
実行率が2倍以上になるという研究データもあります。
提唱者:ピーター・ゴルヴィツァー(ニューヨーク大学教授)
❌ 「親切にします」
- ⭕ 「もし、部活の後輩が荷物を持っていたら、その時は、『一つ持つよ』と声をかけます」
具体的であればあるほど、脳はそれを「予定」として認識し、実行しやすくなります。
また、前回紹介した「コミットメント」の効果も働き、書いたことを守ろうとする心理も期待できます。こいつは良いですねぇ。
自分の「嘘」に向き合う(自己欺瞞への対抗)

実は、人間は「自分に嘘をつく」のが得意だったりします。
「本当は面倒くさい」と思っているのに、「優しくするのが大事」と書いて自分を納得させてしまうような心理。
自分に対する嘘は、短期的には不快感を消してくれますが、長期的には「本当の自分」を見失わせます。
参照研究:UC Berkeley & MIT Study (2024). To believe or not to believe: The role of self-deception in belief formation.
だからこそ、振り返りは「綺麗な言葉」で飾らせないことが大切です。
特に思春期の中学生は、建前への嫌悪感が強い時期ですから。
「本当は迷うかもしれないけれど……」
「100%は無理かもしれないけれど……」
そんな「本音の揺らぎ」こそが、道徳性の正体です。
教師が「迷ってもいいんだよ」「本音で書いていいんだよ」と受容する姿勢を見せることで、ノートは単なる提出物から、「自分と向き合う日記」へと進化するわけです。
まとめ:評価にも使える「成長の証」

この「過去・現在・未来」の形式で記述が蓄積されると、学期末の評価(所見作成)がめちゃくちゃ楽になります。
「4月は自分のことしか書いていなかった子が、10月には『〇〇さんの意見で変わった』と書いている!」
これぞ、多面的・多角的な見方が育っている証拠でしょう。
さて、振り返りを書くためには、授業中に子どもたちの思考を整理し、黒板に残しておく必要がありますよね。
次回は、思考を可視化する「構造的な板書」と、今の時代ならではの「ICT活用(デジタル板書)」について解説していきます。
黒板とタブレット、どう使い分けるのが正解なのか?
その答えをお持ちします。それでは!
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