よく学級に「個人目標」を子どもが書いた掲示物ってあるけど、
あれって意味あるの?
そんな疑問持ったことありませんか?
私は良いのか悪いのか、学校現場の色々なことに対して「これ意味あるの?」という気持ちを持ってしまいます。
今回は学級でよくある「個人目標」を学級に掲示することの意味について考えていきたいと思います。
ちなみに、今回の内容を書くにあたって、科学的知見を与えてくれた本は『影響力の武器』という社会心理学の世界的名著です。
メンタリストDaiGoさんが「自分の人生を変えた本」として紹介されている本です。
そんな本をもとに、今回の記事を書いていきます。
個人目標とは
小学校、中学校では学期ごとに「個人目標」のようなものを掲示したりしていますよね。
内容はこんな感じでしょうか。
個人目標の内容例
- 生活面の目標
- 学習面の目標
- 家庭での目標
- 部活の目標
- こんな自分になりたい!
- 1年後の自分
こんなところでしょうか。
私は現場に出てから、担任を何度もしていて思っていたことがあります。
これ、学級に掲示する意味ある?
見なくない?
実際、私はこんな思いから、ここ数年、個人目標の掲示はしていませんでした。
教育的効果が本当にあるのか、実感できなかったからです。
でも、この効果を実感するって、なかなか難しいですよね。
やり方によっては、反省を記入する欄を作っておいて、子ども自身に達成度を記入させるなどの方法もあるでしょう。
しかし、個人目標を学級に掲示するだけでもどうやら効果がありそうなんです。
【戦争の歴史から学ぶ】自分の意見を公衆の目に触れさせる意味とは?
では『影響力の武器』の中にあった興味深い例を紹介します。
朝鮮戦争の間、アメリカ兵捕虜は中国共産党が管理する収容所にいました。
戦時中は、捕虜に対して暴力行為によって、自軍に協力させたりすることが多かったようですが、中国は違った方法をとったそうです。
その方法とは、「寛容政策」と呼ばれる、心理的なアプローチによって捕虜自身の考え方を変えてしまうという方法です。
中国の寛容政策
- アメリカ兵捕虜に対して、反米的、あるいは中国の共産主義に賛同するような意見を述べるように求める。
- 「アメリカは完璧な国ではない」ということを認めさせたあと、「アメリカの問題点リスト」を作成させる。
- 捕虜仲間でアメリカの問題点について討論させ、リストを読み上げさせる。
- アメリカの問題点リストをさらに詳しく論じるための作文を書かせる。
- この作文を他の捕虜収容所や、アメリカにも送られている反米ラジオで紹介する。
この過程を終えた時、アメリカの問題点についての作文を書いた捕虜は、中国の協力者となっていったそうです。
このように、一切、暴力的な行為をせずに、中国はアメリカ兵捕虜のマインドを変えたという史実があるのです。
そして、とにかく中国人はアメリカ兵捕虜が書いた親中的な作文を、公衆の目に触れさせようと努力しました。
収容所内に貼り出されたり、収容所のラジオ放送で読み上げられたりしたそうです。
なぜなのでしょうか。
【パブリック・コミットメント】意見の公表が、意見を持続させる
中国人は「パブリック・コミットメント」という心理学の原理を深く理解していたそうです。
パブリック・コミットメントとは、簡単にいえば「意見を公表することがその意見を持続させる」ということです。
人間は、他人に見えるような形で自分の立場を明確にすると、一貫した人間に見られたいばかりに、その立場を維持しようとする強い気持ちが生じるのだそうです。
ちなみに、自分の意見が広く知れ渡っていればいるほど、自分の意見を変えにくくなっていくそうです。
人間の心理には、一貫性を保とうとする性質があるのだそうです。
その性質を上手に利用したのが、朝鮮戦争時の中国でした。
あれ?自分の立場を公衆の目に触れさせる・・・
何か個人目標の掲示とつながりそうな気が・・・
【個人目標の効果の最大化】なるべく公衆の目に触れさせる方法
まず、そもそも個人目標を書かせる目的は「子どもの意識の変容」です。
より高い意識を持って、目標に向かっていってほしいと教師は願っているはずです。
そうであれば、個人目標の効果の最大化をしていくべきです。
中国の寛容政策にもある「公衆の目」をもとに、学級における個人目標の効果の最大化を考えていきましょう。
方法1:学級に掲示する/廊下に掲示する
これはよく先生方がされている方法だと思います。
ただ、もう少し「公衆の目」に触れることを意識する場合、廊下に貼り出してみるのも効果的です。
学級内での掲示よりも、廊下に貼り出すことで、公衆の目の数が増えます。
場所 | 公衆の目 |
学級内掲示 | 学級の子ども、担任 |
廊下掲示 | 全校生徒、全教員、保護者、地域の方、来校した教員 |
方法2:学級通信に載せる
個人目標を一覧にして、学級通信に掲載することも「保護者に認識してもらう」ということで効果があります。
一人一人の個人目標を入力することは大変・・・という先生!
以下の方法で、子どもたちの個人目標を提出させることで一気に入力の手間が省けますよ!
アプリ、サービス | 方法 |
Google form | Googleアカウントが整備されている地域で活用可能。 Google formで入力させて、スプレッドシートに出力して終わり。 |
Exselの共有 | Microsoftが整備されている地域で活用可能。 Excelファイルを共有し、生徒にセルへ入力させる。 |
Numbersの共有 | iPadが整備されている地域で、なおかつApple IDが付与されている地域で活用可能。 Numbersファイルを共有し、生徒にセルへ入力させる。 |
私はGoogle formのパターンが便利なので、よくその方法をやります。
ぜひ参考にしてみてください!
方法3:毎日帰りの会で数名分読み上げる
帰りの会の時間は限られているので、せいぜい1日につき2名でしょうか。
「みんなの前で、生活面、学習面の目標を読み上げるからね!」と事前に伝えた上で、書かせた方が無難でしょう。
結構、帰りの会の時間に注目をされることは公衆の目に触れるという意味では効果がありそうです。
方法4:職員室でシェアすることを伝える
これも、個人目標を書く前に、「先生方全員に見てもらうよ!」と伝えるとより効果があると思います。
さらに、先生方に協力してもらって「〇〇さん、生活面の目標の早寝早起き頑張ってね!」など、声かけしてもらうとより効果が増していきそうです。
公衆の目に触れているという感覚をより強めていけるかがポイントですね!
まとめ
どうすれば個人目標を効果的なものにできるのだろう。
個人目標って、意味ある?
そう考えている先生方にはぜひ参考にしていただきたいと思います。
社会心理学の立場から、学校現場における実践を見ていくと面白いな、と感じています。
『影響力の武器』ぜひ読んでみてください!
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